温暖な気候と豊かな自然、そして物価の安さや親日的な国民性から、移住先として人気が高まっているタイ。
しかし、実際に移住を考えると、「ビザの取得は?」「住まいや医療は大丈夫?」「治安や言葉の壁は?」といった不安や、思わぬデメリットに直面することもあります。
この記事では、タイ移住のメリットだけでなく、デメリットや注意点も踏まえながら、スムーズに移住を実現するために必要な準備や手続きの流れをわかりやすく解説します。
タイ移住のメリット
タイが日本からの移住先として注目される背景には、物価や気候だけでなく、生活インフラや日本人コミュニティの充実といったさまざまな理由があります。
ここでは、タイ移住の主なメリットを具体的に紹介していきます。
物価が比較的安い
タイは経済成長が進む一方で、日常生活にかかるコストは日本と比べるとまだまだ抑えられます。
特に外食費や交通費、住居費といった基本的な生活コストが安く、年金生活者やリモートワーカーの移住先としても人気があります。
屋台では1食100円前後でお腹を満たすことができ、タクシーの初乗りも40バーツ(約170円)程度と非常に安価です。
ただし、日本と同等のクオリティやサービスを求める場合は、料金もそれに比例して上がるため、生活スタイルに応じて支出は変動します。
日本語対応のお店が増えている
タイにはバンコクを中心に、日本人が多く住むエリア「日本人街」が点在しています。
なかでもトンローやプロンポン周辺は、日系スーパー、レストラン、美容院、クリニックが集まっており、日本語だけでも日常生活をほとんど不自由なく送ることができます。
地方都市でも、日本人向けのサポートが年々整備されてきているのは、タイに移住するメリットと言えるでしょう。
交通機関が発達している
タイの首都バンコクは、BTS(スカイトレイン)やMRT(地下鉄)、バス、タクシーなど多様な交通手段が利用可能です。
BTSやMRTは駅周辺の開発も進んでおり、通勤や買い物、レジャーに活用できます。
また、観光地ではトゥクトゥクやソンテウ(乗り合いバス)など、タイならではの交通機関も健在しています。
地方への移動には格安航空会社(LCC)の活用で、コスパよく国内旅行を楽しめるのも、タイ移住の魅力です。
豪華なコンドミニアムに住める
タイでは外国人が土地を購入することは基本的にできませんが、コンドミニアム(分譲型集合住宅)は外国人でも購入可能です。
新築の高級物件でも、日本と比べて割安な価格で手に入れることができ、ジム・プール・セキュリティ完備など、付加価値の高い住環境が整っています。
賃貸物件の場合にも、家具・家電付きの2〜3LDK物件が、月3万〜4万バーツ(約12万〜16万円)以下で借りられることも多く、コスパの良さを実感できるでしょう。
日本と行き来がしやすい
タイ移住のメリットは、日本と行き来がしやすい点にもあります。
日本の主要都市(東京、大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台、沖縄)からバンコクへの直行便が多数あり、フライト時間も5〜7時間程度で移動可能です。
LCCを利用すれば航空券代も抑えられるため、気軽に日本との往復ができ、家族や仕事の都合で定期的に一時帰国したい方にとっては大きなメリットです。
ペットを連れて行きやすい
タイは、他の東南アジア諸国に比べてペットとの共生がしやすい国です。
日本から犬や猫を連れていく際も、必要な手続きを行えばスムーズに移動可能です。
また、都市部ではペット可のマンションも多く、ドッグラン付きの施設やペットフレンドリーなカフェ、獣医クリニック、トリミングサロンも充実しています。
イスラム教徒が多いマレーシアやインドネシアとの違い、犬の散歩なども気兼ねなくできる環境が整っているのもポイントです。
タイ移住のデメリット
タイ移住にはさまざまな魅力がありますが、その一方で見落としがちな注意点や不便に感じることも少なくありません。
移住後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないためにも、以下のデメリットを事前に理解しておくことが大切です。
移住するならタイ語は必須
タイのなかでもバンコクやシラチャなど外国人が多く集まる都市部では、英語や簡単な日本語が通じる場面もあります。
しかし、日常生活のすべてがそうではありません。
特に地方やローカルなお店、役所、病院などではタイ語が基本となるため、タイに移住するなら最低限のタイ語力が必要になるでしょう。
タイ語は発音や声調が難しいことで知られていますが、数字やあいさつ、買い物時に使う表現など、生活に必要なフレーズは移住前に学んでおくと安心です。
タイ料理が口に合わないと辛い
タイ料理は世界的に人気がある一方で、パクチーやナンプラー、スパイスを多用するため、苦手な方にとっては毎日の食事が苦痛に感じられることもあるかもしれません。
もちろん、バンコクやシラチャなどには日本食レストランや日系スーパーが数多くありますが、価格は日本の2〜3割増しになると考えておきましょう。
節約志向であれば、タイ料理を受け入れる柔軟さが求められます。
物価は思ったほど安くない
「タイは物価が安い」と期待して移住すると、意外に生活費がかかって驚く方も多いです。
ローカルな暮らしを選べば確かに安く済みますが、日本人が多く暮らすエリアで、清潔なコンドミニアムに住み、日本食や輸入品を中心に購入する生活をしていると、生活費は日本と大差ない、あるいはそれ以上になる場合もあります。
特に教育や医療、車の購入などでは日本以上にコストがかかるケースもあるため、事前に予算の見通しを立てておくことが重要です。
ビザや労働許可証の申請が大変
タイに長期滞在するには、リタイアメントビザや就労ビザなどの種類に応じたビザを取得しなければなりません。
特に、タイで働く場合は、ビザに加えて「ワークパーミット(労働許可証)」の取得が必要で、勤務先企業のサポートが必須です。
また、ビザは1年ごとの更新が必要なケースが多く、更新手続きのたびにイミグレーションオフィスに出向く必要があります。
手続きには時間や書類の準備がかかり、タイ語での対応が求められることもあるため、慣れないうちはストレスを感じるかもしれません。
最近ではビザ代行サービスを利用する人も増えていますが、その分の費用も考慮しておきましょう。
タイ移住に必要なビザの種類
ビザは渡航先の国に事前に申請し、審査を経た上で発行される「入国許可証」とも言えるものです。
韓国目的であれば日本のパスポートを持っており、条件を満たせばビザはなくても30日間滞在可能になります。
しかし、30日以上の滞在や観光目的以外の場合はビザを取得する必要があります。
ここでは、タイ移住に必要なビザの種類を詳しく解説していきます。
ノンイミグラントビザ(非永住ビザ)
タイに滞在する目的や形態によって13種類のカテゴリーに分けられているビザです。
有効期間は90日間と決められており、期間内であっても出国すると執行するシングルエントリーと、出国しても再入国できるマルチプルエントリーの2種類があります。
滞在目的によっては、マルチプルエントリーが取得できない場合もあります。
以下では、ノンイミグラントビザから滞在に使えるカテゴリーをピックアップして紹介します。
B(就労)
タイで就労する際に必要なビザです。
最長期間は90日間で、取得するにはタイ労働省とタイ入国管理局にて申請手続きが必要です。
マルチプルエントリーはできません。
O(家族)
タイ人、もしくはタイで正規就労する家族の配偶者・不要家族が取得できるビザです。
シングルエントリーは90日間、マルチプルエントリーでは1年間の滞在が可能です。
O(年金受給者・リタイヤメント)
日本などタイ以外の国の年金受給者が長期滞在する際に取得するビザです。
シングルエントリーは90日間、マルチプルエントリーでは1年間の滞在が可能です。
OA(ロングステイ)
50歳以上で、就労や永住を目的としていない人が長期滞在するためのビザです。
有効期限は1年間ですが、1回のみ1年間の延長申請が可能です。
OX(ロングステイ10年)
50歳以上で、300万バーツ以上の預金または収入がある場合に取得できるビザです。
有効期限は5年間ですが、1回のみさらに5年間の延長申請が可能です。
ED(教育・留学)
タイ教教育省の認可を受けた教育機関への入学や留学などを目的としている学生のみが申請できるビザです。
90日間の滞在が可能です。
イミグラントビザ(永住ビザ)
タイに永住できるビザです。
取得には、タイで就労許可証を取得し3年以上働いている、配偶者がタイ人である、タイ語でコミュニケーションが取れるなど定められた条件を満たす必要があります。
タイ移住に必要な手続きの流れ
タイへ移住するにはどのような手続きや準備が必要なのか、一連の流れをご紹介します。
仕事を探す
就労ビザの取得を目指すなら、タイでの仕事を見つけるのが第一です。
現地で探すのは難しいと思いますので、ネットを中心に情報収集を行いましょう。
最近は海外転職情報が揃った求人サイトも多いです。
興味のある求人を見つけたら、問い合わせをするなどして、積極的に行動することが大切です。
住む場所を決める
タイでの仕事が決まったら、次は住まい探しです。
企業によっては住居を手配してくれることもありますが、多くの場合自分で部屋探しから契約までを行わなくてはいけません。
日系の不動産会社であれば、日本人や日本語の話せるスタッフが在籍しているため便利です。
ただし、高めの物件が多く、仲介手数料も発生するため、少しでも費用を抑えたいのならタイのローカル不動産会社の利用するのも一つの方法です。
海外転出の手続きを進める
仕事と住まいが決まったら、海外転出のための各種手続きを行う必要があります。
ビザの申請、保険の手続き、海外転出届、国民年金、国民保険など、必要な手続きを進めていきましょう。
銀行やクレジットカードなどの住所変更、場合によっては解約も忘れないように気をつけてください。
タイでも運転する予定がある場合は、国際免許の取得をおすすめします。
引っ越し準備
日本を出発する準備が整ったら、最後は引っ越しです。
新居に荷物を送るには、船便や航空便を利用します。
船便は通常2~3週間程度ですが、場合によっては1ヶ月以上かかることもあります。
航空便は遅くても1週間以内で到着しますが、船便に比べて費用が高いです。
そのため、重いものや遅くても困らないものは船便ですぐに必要なものは航空便というふうに使い分けるのも良いでしょう。
現地で購入した方が安い場合もあるため、何を持っていくかはよく考えることが大切です。
タイ移住についてよくある疑問
続いては、タイ移住を検討している方が気になる代表的な疑問について、詳しくお答えしていきます。
実際に移住した方の声や現地事情をもとに、リアルな情報をまとめました。
Q:生活費はどのくらい必要?
タイでの生活費は、一人暮らしであれば月10万円〜20万円程度が目安です。
ローカルな生活であれば10万円前後でも暮らせますが、日本食や日本人向けのサービスを利用する機会が多い場合は、それ以上の費用がかかることもあります。
また、家族でタイに移住し、2ベッドルーム以上の高級コンドミニアムを賃貸する場合、家賃が10万円を超えることも多いため、生活費は月20万円〜30万円が目安になります。
Q:タイの治安はどう?
タイは東南アジアの中では比較的治安が良いため、日常生活を送るうえで極端な危険を感じることは少ないでしょう。
しかし、日本と比べるとスリや置き引き、詐欺などの軽犯罪は多いため、特に観光地や人が多く集まる場所では注意が必要です。
バンコクやパタヤなどでは、日本人を狙ったトラブルも報告されています。
移住前に、外務省の「海外安全ホームページ」や在タイ日本大使館の最新情報をチェックし、安全対策を万全にしておきましょう。
Q:言葉や文化の違いに困ることはある?
タイ語が話せない状態での移住は、役所での手続きや病院での診察など、生活の中で不便を感じる場面が出てくるでしょう。
英語が通じる場所も増えていますが、タイ語が少しでも話せると、現地の人との関係がスムーズになり、暮らしの安心感も高まります。
また、タイでは仏教が深く根付いており、僧侶や寺院に対する礼儀が重視されます。例えば、女性は僧侶に触れることが禁じられており、物を直接手渡すこともマナー違反です。
頭は神聖な部位とされているため、人の頭に触れる行為、子どもの頭を撫でる行為も避けましょう。
タイに移住後、円満に暮らすためには、文化や価値観の違いを尊重する姿勢が求められます。
Q:タイの医療事情は?
バンコクやチェンマイなどの大都市には、国際基準を満たした医療機関が多くあります。
バムルンラード病院やサミティヴェート病院などでは、日本語通訳が常駐しているため、タイ語が話せなくても安心して受診できるでしょう。
また、移住前に海外旅行保険やタイの民間医療保険に加入しておくと、より安心して生活を送ることができます。
Q:タイ移住に持ってきて良かったものは?
実際にタイに移住した方が「持ってきて良かった」と感じている日本のアイテムは多岐にわたります。
現地でも調達可能なものもありますが、品質や使い勝手を考えると、以下のようなものは日本から持参するのがおすすめです。
- 常備薬
- 調味料
- インスタント食品
- 茶葉
- 衣類
- シャワーヘッド
- 日用品(ラップ、歯ブラシなど)
- 晴雨兼用の折り畳み傘
タイの薬は効果が強く感じることもあるため、風邪薬や下痢止めなどの常備薬は日本のものを持参するのが安心です。
調味料や茶葉は日系スーパーでも購入できますが、価格が割高なため、持参するほうが良いでしょう。
他にも、冷房対策になる羽織りものや、硬水対策のためのシャワーヘッド、品質の良い日本製の日用品、突然の雨に備えられる晴雨兼用の傘など、長期滞在や生活の安定を考えるなら、現地にない快適さを日本から持ち込むのも大切な工夫です。
日本人が住みやすい!タイに移住しよう
物価が安く、日本語の通じる場所も多いタイは、日本人にとって住みやすいため移住先として人気があります。
バンコクには日本人街もあり、日本とそれほど変わらない生活を送ることも可能です。
一方で、言語や文化の違い、ビザや労働許可証の取得・更新手続きが必要など、タイ移住にはデメリットもあります。
タイへの移住を検討する際には、メリットとデメリットを正しく理解し、計画的に事前準備を行いましょう。